プログラム
仲泊 聡 先生
仲泊 聡 先生
補装具費支給制度は、障害者総合支援法に基づく制度で、身体障害者手帳を有している障害児者に加え、障害者総合支援法に定める特殊疾病で障害認定基準と同等の身体機能障害を有している児者が対象となっている。補装具費支給制度はその原資をすべて租税で賄う「公助」の社会保障であるため、社会保障制度の原則である「共助」とは支給基準が異なる。つまり、医療保険で支給される治療用装具や労災保険で支給される義肢等補装具はいずれも必要な経費(掛け金)を自ら負担する「共助」の社会保障によるものであるため、「公助」で支給される補装具とは支給される目的も基準も異なり、補装具費支給制度では障害のない者との公平性の観点も必要となる。また、補装具は障害児者の身体機能を補完し、又は代替するものであることから、障害のある身体機能のみに用いられるものでなければならない。視覚障害領域の補装具のうち矯正用の眼鏡やコンタクトレンズは、障害認定基準を満たさないいわゆる晴眼者も使用しているが、晴眼者が使用するものは補装具費が支給されない。したがって、矯正視力が障害認定基準を満たさない場合、例え遮光眼鏡を補装具として支給されていても、矯正用の機能の付加及び矯正用眼鏡の購入には補装具費を支給しないこととなる。補装具費支給制度について理解の上、適切な補装具の処方と適合確認をお願いしたい。
徳井 亜加根 先生
(学歴)
神戸大学法学部卒、国立障害者リハビリテーションセンター学院義肢装具学科卒、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了
(職歴)
法務省地方局にて勤務後、義肢装具士免許を取得
川瀬 和秀 先生
厚生労働省が実施した令和4年生活のしづらさなどに関する調査で、視覚障害者の推計数は27.3万人だった。前回(平成28年)では31.2万人、前々回(平成23年)では31.6万人だった。
視覚障害で生活がしづらい人が減っているなら喜ばしいことだが、この結果を受けて我々は喜んでいいのだろうか。数字を細かく見ていくと、調査票配布部数が24,427部、回収数が14,631部(回収率59.9%)、有効回答が14,079部(有効回答率96.2%)で、そのうち身体障害者手帳を持っている者は6,679人、さらにそのうち視覚障害のある者は450人のようだ。「眼鏡を使用しても、見えにくいといった苦労はありますか」という問いに「全く出来ません」「とても苦労します」と答える人の推計数はそれぞれ18.4万人と55.8万人だった。
回収率が6割程度であること、有効回答率が妙に高いこと、70歳以上がかなり減少していること、調査時期がコロナ禍第8波の上り坂の頃であったことなどから、特に高齢の視覚障害者からの回答が集まらなかったのではないか、と訝しんでいる。これらのような、集計時に隠れてしまう、誤差要因の状況証拠の見方について解説する。
少なくとも我々は27.3万人という数字だけには流されず、眼鏡を使用しても見えにくいといった苦労がある74.2万人にロービジョンケアをしていけばよいのではないかと考える。
堀 寛爾 先生
(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第二診療部)
高野 雅彦 先生
ロービジョン(LV)の人にとって読むことは困難を感じやすい活動であり,リハビリや教育での関心が高い。読みを捉えるモデルとしては古くはLogogen Model(Morton, 1969)に始まり,Dual-Route Cascaded model(Coltheart, et al., 1993)を経て,川﨑ら(2019)により「読んで理解するプロセス」(読みプロセス)が提案されている。さらにLVの読み評価を考慮すると,他者の意識に存在する情報を伝えるための文字等のメディアも評価の対象となる。LVのリハビリでの読み評価ではこのメディア評価が重んじられる。これは読みプロセスが完成した人を対象にすることの多いリハビリならではといえる。一方,読みプロセスを構築中の人を対象とする教育との相違点ともいえる。メディアの評価としては,MNREAD,国リハ式近見チャート,IReST,Bailey-Lovie Reading Chartなどが存在し,読みプロセスの評価にはCARDS,STRAW-R,K-ABC,LD-SKAIPなどが存在する。メディアの評価の特徴としては,文字サイズ等のメディア特性を操作することで読みパフォーマンスを測定する点で共通しているが,その結果を個人内で比較するのか,母集団と比較するのかといった差異があり,目的により使い分ける。例えば,個人の視覚特性に適した読み環境がテーマであれば前者が適し,学級中での適性の検討や,受験時の配慮の検討では後者の視点に立った検討が必要となる。メディア評価の際のその他の考慮事項として,視距離の考え方や読み速度の捉え方がある。MNRAEDは視距離や読み速度を厳格に定義するが,それ以外の評価法における厳密さは様々である。私たちは標準データを用い,視距離,読み速度をラフに定義した評価を実践しており,様々なニーズへの適用を検討している。本研修ではこれらのことを紹介しする。更に最近行っている,三次元モーションキャプチャ,NIRS,視線計測を用いた読み評価研究について簡単に紹介する。なお,読みプロセスの内容については取り扱わない。
利益相反行為に該当なし。
氏間 和仁 先⽣
(広島大学大学院人間社会科学研究科)
奈良井 章人 先生