プログラム
「見るを支え・守り・楽しむ。網膜投影技術が実現する社会」
レーザ網膜投影は3原色のレーザビームを束ねて瞳孔に収束させ、網膜に高精細なフルカラーの映像を結像させる技術です。レーザ網膜投影には次の3つの特徴があります:1)ピンホール効果によって網膜にピントが合うため、近視・遠視・乱視であっても鮮明な画像を見られます。2)人間の眼ではその構造上ピントを合わせられない網膜の周辺部分にも、ピントの合った映像を投影するので、視野の広がりを感じられます。3)肉眼で見る景色にデジタル映像を重ねて見る、いわゆるAR(Augmented Reality 拡張現実)を実現できます。
QDレーザは、レーザ網膜投影技術の効果を実証し、安全性を満たした設計技術を確立し、製品化してまいりました。現在は、「見ることを支える」・「見ることを守る」・「見ることを楽しむ」という3つの領域で事業を展開しています。
これまでに、不正乱視の視力補正を目的とする医療機器「RETISSAメディカル」と、眼のピント調整機能を使わずに美しい画像を楽しめる民生機器の「RETISSA Display」を製品化しました。さらに、2022年度には、公共空間で来場者が使用できる手持ち型機器「ONHAND」、ロービジョン者の行動の自由度を拡張するデジタルカメラ用ビューファインダー「NEOVIEWER」、自分で眼疾患の兆候をとらえられる小型簡易チェック機器「MEOCHECK」を順次製品化します。
QDレーザは全世界で2.5億⼈と推定されているロービジョン者(矯正眼鏡を装⽤しても視覚に不自由さを抱える)の“⾒えづらい”を“⾒える”に変えるプロジェクト「With My Eyes」を実施してきました。最新の第3弾のビデオ「見えたのは、わたしの世界」では、パラ水泳選手の清水滉太さんが、NEOVIEWERを携え自らの眼で海を見る旅をしました。どこまでも広がる海の大きさや色鮮やかな海中の様子を、NEOVIEWERを使って味わい、自身の「見る」ということについて語る様子を映像におさめました。
小型簡易チェック機器「MEOCHECK」については、眼疾患スクリーニング手法としての妥当性と課題を明らかにするため、タクシードライバーを対象に、「人を対象とした医学系研究」を行っています。
本講演では、レーザ網膜投影技術の原理と効果、医学系研究、製品応用と社会実装活動を紹介し、網膜投影技術が実現する社会を描きます。

保田 雄亮 様
欧州、米国、イスラエル等の医療機器メーカーの輸入代理店にて営業企画を担当。放射線診断機器、治療器など大型機器を中心に放射線科、循環器、整形外科、乳腺外科へ、先進機器の紹介、導入を進めてきた。
2017年よりQDレーザに入社。国内外の企業や研究機関、医療機関への網膜投影技術の普及に係る業務に広く携わっている。
「心理発達課題のある子ども・保護者への対応」
平成27年9月9日に公認心理師法が成立し、平成29年9月15日に施行され、わが国初の心理職の国家資格として「公認心理師」が誕生しました。公認心理師とは、保健医療、福祉、教育その他の分野において、専門的知識及び技術をもって、
- 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること
- 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導、その他の援助を行うこと
- 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと
とされています。
令和2年度の診療報酬改定では、小児特定疾患カウンセリング料が新設され、医療保険領域では、児童の不登校や登校拒否、発達障害や虐待など幅広い心理的問題に関して早期から介入し、児童への対応方法の提供や心のケアにより生活環境を整えていくことが期待されています。
徳島県立中央病院では、小児科からの依頼で心身症の子どもたちをみる機会が多々ありますが、一定数心因性視覚障害と診断された子どもがいます。今回は、そういった子どもたちや発達障害傾向のある子の背景について、個人の特性と環境要因の相互作用という観点からお話できればと思います。また、そのような子ども達が診察に来る心理状態についてお話し、対応のポイントを説明させていただきたいと思います。

海面 敬 先生
「多様性社会における眼科診療」
近年、様々な文脈で多様性という言葉が使われるようになりました。日本において多様性に関する考え方が浸透し始めたのは2000年以降で、主に企業における人材雇用のあり方としてのダイバーシティ(多様性)でした。
その後、国際社会では国際人権法に基づく「障害者の権利に関する条約」(2006年)に日本を含めた多くの国々が批准し、各国で障害者制度改革のための法整備がなされました。日本では、2016年に障害者差別解消法が施行されてから「障害を理由とした差別」が禁止され、国や自治体には合理的配慮が義務づけられました。障害者差別解消法は2021年に改正され、民間事業者にも合理的配慮が義務づけられることになりました。その他にも、国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が採択され、地球上の「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある社会の実現を国際社会の共通目標にするなど、障害を持つ人々を取り巻く環境は一昔前と比べて大きく変化してきました。
今後これらの変化に対して、我々医療従事者にも柔軟な対応を求められることが予想されます。様々な障害や特性を持つ患者様にどのように対応していけばよいか、当院での診療経験をもとにお話したいと思います。

星川 じゅん 先生